歯科治療でむし歯を削ったあと、詰め物や被せ物を装着することはよくあります。
治療が終わってこれで安心と思っていたのに、しばらくしてから「詰め物をしたところが痛い」「被せ物がしたところがしみる」といった症状を感じ、不安になる方も少なくありません。
実は、治療後に痛みが出るのは珍しいことではなく、その多くには原因があります。
適切に対処すれば症状は落ち着きますが、放置すると悪化して再治療が必要になることもあるため、早めの対応が大切です。
ここでは、詰め物や被せ物の治療後に痛みが起こる原因や考えられる症状、そして適切な対処法について詳しく解説します。
目次
■詰め物・被せ物をした後に痛みが出る主な原因
◎治療直後の一時的な刺激
歯を削った後は神経が敏感になっており、詰め物や被せ物をした直後に、しみるといった症状が出ることがあります。
特に金属の詰め物は熱を伝えやすいため、冷たい飲み物や熱い食べ物で刺激を感じやすいのです。通常は数日から1週間〜2週間ほどで落ち着いていきます。
◎噛み合わせの不具合
詰め物や被せ物の高さが合っていないと、噛んだ時に違和感や痛みを覚えることがあります。
高さが高すぎると、噛みしめたときにその歯だけに強い力がかかり、神経や周囲の組織が炎症を起こす原因になります。
噛み合わせの調整で改善できることが多いため、気になる場合は早めに歯科医院でチェックしてもらいましょう。
◎神経の炎症(歯髄炎)
むし歯の感染が深く、神経に近い部分まで達していると、歯を削る必要があり、治療後に炎症が残ってしまうことがあります。
その結果、何もしていなくてもズキズキとした痛みが出ることがあり、進行すると神経を取る根管治療が必要になることもあります。
◎二次カリエス
詰め物・被せ物と歯の間にわずかな隙間があると、そこから細菌が侵入し、再びむし歯が進行することがあります。
治療して間もない時期よりも、数ヵ月〜数年後に痛みが出る場合は、二次カリエスの可能性が高くなります。
◎歯の根のトラブル
根の先に膿がたまって根尖性歯周炎になっていたりすることもあります。
この場合はズーンと重い痛みや、ズキズキと噛んだときの響くような痛み、顔の腫れなどを伴うことがあります。
■自分でできる応急処置
◎冷たいタオルで冷やす
痛みが強い時は、頬の外側から冷たいタオルや保冷剤を軽く当てて冷やすと、炎症による腫れや痛みを一時的に和らげられます。
ただし長時間当て続けると血流が悪くなるため、10分程度を目安にしましょう。
◎市販の鎮痛薬を使用する
市販の痛み止めは一時的な痛みの緩和に有効です。
ただし、あくまで応急的な処置であり、原因を取り除くことはできません。
痛みが落ち着いても必ず歯科医院で診てもらいましょう。
■歯科医院での治療方法
◎噛み合わせの調整
詰め物や被せ物の高さを少し削るだけで、噛んだ時の痛みがすぐに改善することもあります。自分で判断せず、早めに調整を受けることをおすすめします。
◎根管治療
神経の炎症や根の先に膿がたまっている場合は、根管治療が必要です。
感染した神経や細菌を取り除き、根の内部を消毒、密封することで症状を改善し、自身の歯を残せる可能性が高くなります。
◎被せ物や詰め物の再製作
隙間から再びむし歯ができている場合は、古い詰め物や被せ物を外して治療を行い、新しいものに作り替える必要があります。
【原因を見極めて対処する】
治療後の歯の痛みは多くの方が経験する悩みです。
原因には、治療直後の一時的な刺激、噛み合わせの不具合、神経や歯の根の炎症、再びむし歯ができてしまったケースなど、さまざまなものがあります。
一時的な痛みで自然に落ち着くこともありますが、強い痛みや長引く症状、噛んだ時の違和感が続く場合は、早めに歯科医院を受診することが大切です。
自己判断で放置すると、歯の神経を失ったり、再治療や抜歯が必要になったりする可能性があります。
治療後の痛みが気になる時は「よくあることだから」と軽く見ず、歯科医院で相談して原因を突き止め、適切な対処を受けるようにしましょう。